昭和は遠くなりにけり
また恩人が天に召された。
民謡文化研究の第一人者であり、音源・資料の蒐集家である札幌市の高田裕氏が昨日亡くなられた。
津軽の芸能文化を体系的にまとめ、歴史に残したのは、大條和雄氏、松木宏泰氏、高田裕氏、山谷工氏だと私は思う。
どの方からも沢山のご厚誼を賜った。
特に高田氏からは数多くの資料を託され、イベントにも直接ご支援を頂いた。
何度か札幌に伺った際もビールを飲みながら貴重な話を聞かせてくださった。
2011年はあの叩き三味線の大御所、故木田林松栄の生誕100年に当たる年で、高田氏が自ら蓄音機とSPレコードを持ち込んでのトークコンサートを行った。
しかも、会場の明かりは全て消して、舞台にはロウソクを灯し、ゆらゆらと揺れる薄暗い紅色の灯りに照らされて一人の少女が津軽三下がりを踊った。
音源は蓄音機から流れる木田林松栄と浅利みきだった。
あのゾクゾクした思い出は今も鮮烈に残っている。
これが高田氏のやりたかったことであり、他者にはない際立った文化センスなのである。
これまでのご厚情に心から感謝し、ご冥福をお祈りします。
2022.5.1
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