「阿蘇の持続可能な観光地域づくり」 | 小タヌキのウェルネスコラム第15回
新年あけましておめでとうございます。
本年も一般社団法人かなぎ元気村の取り組みを温かく見守っていただきたく、そして、時には、一緒に「大人の遊び場」に足を運んでいただければと思っております。
さて、還暦を迎え、赤いベストを着て、もう一度、少年のココロを取り戻し、新たなチャレンジで龍の如く飛翔しますと初詣で誓い、家に戻って、九州からいただいた米焼酎「川辺」とふるさと納税で取り寄せた「おせち」で一杯いただいていたら、グラッと能登半島地震で揺れた。
昨年の気候変動に加え、自然災害。地球が自己中心的な人間に怒りをもって警告を始めている?!
前回のコラムで、阿蘇での取り組んできたコンテンツが「ツーリズムEXPOジャパン2023」(大阪・関西)にて、『特別な許可を得て草原体験!噴煙を上げる阿蘇中岳火口と「千年の草原」E-MTBライド』が、「サステナブルな旅AWARD」の大賞を受賞したと報告したが、今回は、そのコンテンツ内容についてもう少し紹介していきたいと思う。
今も噴煙を上げる中岳。阿蘇は、火山と草原の景観に神々しさを感じる土地。火山噴火が起こり、大地が揺れる、だからこそ、自然への畏敬の念が育まれ、神に祈り、神事や祭が執り行われ、農業を中心とした暮らしが営まれるのだ。昨今、この畏敬の念を忘れかけているのが、現代人なのかもしれない。
その畏敬の念を思い起こさせ、阿蘇の大地の自然を保全・活用していくべきと実感させてくれるのが、今回のコンテンツである。
阿蘇をこよなく愛するガイドとE-マウンテンバイク(電動)に乗り、阿蘇駅から火山口まで上っていく。牛の口蹄疫等の問題で普段は絶対入れない牧野の作業道を走る。すぐそばに時間を持て余している阿蘇あそ牛が佇んでいる。その姿に癒されながら。E-マウンテンバイクは上りもスイスイと。やがて、噴煙が上がっている中岳の姿を確認する。
阿蘇山上神社を遠くから参拝し、いよいよ火口へ。噴煙を上げる火口を覗き見。今の生きている阿蘇の鼓動を実感する、そんな貴重な時間が流れていく。
戻りは、カルデラの底まで、風を切って駆け下りていく。阿蘇ならではの大草原のあか牛の放牧されている場所でコーヒータイム。ガイドを務める『あそBe隊』隊長の薄井良文氏は語る。元消防レスキューで安心・安全にアクティビティを通じて阿蘇の魅力を発信している人物だ。
「阿蘇の草原を利用する歴史は千年以上に及び、牛馬の放牧や盆花採りなどくらしの営みによって紡がれてきた。そして、草小積み・草泊り・野焼きといった身近なふるさとの原風景が受け継がれているのです」。
草原を舞台に、秋の草刈りのために草原で寝泊りするための「草泊まり」。刈り取った草を束にして積み上げる「草小積み」。で複雑な風や火の動きを読んで行う「野焼き」。千年以上もの昔から、人々と草原との共生・共存の暮らしは、確実に受け継がれてきたが、継承者がいなくなっているのも事実である。
「私たちが大切にしてきた火山と草原の景観、そこには畏敬の念が根付き、自然ときちんと向き合ってきた。そこに育まれた文化をこのアクティビティを通じて伝えていきたい。その売上の一部が草原に還元されることで、さらに次の世代にこの草原を引き継いでいきたいですね」(薄井隊長)
そして、阿蘇駅に向かって、ゆっくりと牧野を走る。最後に森を抜けると田園風景が広がり、阿蘇の暮らしの場へ。山の神の世界から阿蘇の暮らしが次第に近づいてくるのを実感する。そして、宿泊は内牧温泉。温泉と滋養溢れる食で、阿蘇の「蘇」である「よみがえり」を満喫する。
阿蘇のここちよい時間を価値に変えて提供し、その価値を草原に還元していくという阿蘇の取り組み。牧野を維持・管理する人、あか牛を育てる人、酪農家、野焼ボランティア、観光事業者、そして牧野に訪れる人など、草原に関わるすべての人が、阿蘇の自然に向き合い、草原を次の世代に紡いでいく活動が始まっている。「すべての人が草原の守り人」と謳ってサステナブルな観光に取り組んでいるのだ。
このような観光コンテンツが、小さな好循環を生んでいき、次々に育っていけば、大きな潮流となり、阿蘇の原風景は、さらに輝きを生んでいく。自然への畏敬の念が、アクティビティを通じて育まれていけば、自然を大切にして、草原との関りをより深いものにしていくに違いない。そんな循環が生まれ始めているのが今の阿蘇なのではないか。
火砕流の跡を見学へ
草原で記念撮影。左が薄井隊長
広大な草原を走る
火山灰に覆われた古坊中周辺をライド
噴煙を上げる中岳
2024.1.16
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