神秘と祈りの島、上五島の癒される旅 | 小タヌキのウェルネスコラム第20回
さて、今回は、私が提言する「ここちよい旅」を実感させてくれる地から。「ニッポンをここちよく」は自分の会社「J-fine」のキャッチフレーズ、そして自分が仕事で実現していきたい世界観でもあるが、この言葉は、訪れたこの島での旅の時間から浮かび上がったといっても過言ではない。
2018年7月に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「頭ヶ島の集落」のある五島列島の新上五島町へ。
2005年から「ながさき島自慢観光カレッジ」事業で3年間講師として通い、その後も楽しい仲間たちに会いにちょこちょこお邪魔してきた。コロナ禍で久しく島に渡ることはできなかったが、この4月に、当時からのちょい悪仲間の上五島ふるさとガイドの会会長の青山一信氏と遊びたい、そして、前田旅館の道津和子女将のご当地料理が食べたいと、二人を訪ねた。
有川港が見えてくると、なんと島自慢観光カレッジから続くふるさとガイドの会のみなさんが10名くらいでお出迎え。昔から変わらないおもてなしがうれしい。ちょっと恥ずかしさもありながら、船から降りて再開の握手。そして、世界文化遺産頭ヶ島集落の教会を見学へ。道路がなかった時代に使われていた山ツツジの美しい小路を教会のある集落まで下りていく。何度も訪れたが、この小路で教会へ向かったのは初めて。今までにない体験を準備してくれている。リピーターにはここちよいプランだ。頭ヶ島教会の佇まいは今も変わらず。ステンドガラスから差し込む光が清廉な空気を醸し出す。
上五島には頭ヶ島教会のような29に及ぶ小さな教会がそこに暮らす民を守るように海に向かって佇んでいる。一度、その中のひとつ、青砂ヶ浦教会で日曜朝の礼拝に参加したことがあった。信徒の方々の祈りが澄んだ空間を生み、厳粛で清廉な時間が流れる。潜伏キリシタンの創造してきた長い時間と島の暮らしの中に引き込まれていく。何も語らなくても、そこに身を置くことでビシビシと伝わってくる、感じさせてくれる、これこそが、島の光を感じる、観光の原点だと震えたことを覚えている。
さて、今回の旅に戻ろう。私の上五島の大好きなプログラム「若松瀬戸クルーズ」を紹介しよう。
今日は、キラキラと輝くエメラルド色の海。港から出発してしばらくすると、ココロがやさしくなれる瞬間に出会う。ハリノメンド(針の穴)が視界に入ってきた時だ。長い間かけて波の浸食でできた穴であるが、優しく信心深い人がみるとキリストを抱いたマリア様に見えるという。今回も祈りの島に来て、マリア様が見えると、当時の島の暮らしがグッと近づいた感じがするのが不思議だ。
そして、キリシタン洞窟へ。迫害されつつも慎ましく暮らしていた信者の思いが伝わってくる、そして、その後、海から桐教会を見上げると、海の民を見守っているやさしい佇まいを感じる。ここは祈りの島と改めて実感することができる。そして、若松港へ戻る。今の島の暮らしの中へ導かれていく。
「実は世界遺産になってコロナ禍がやってきて、観光客は戻ってきていませんが、島の暮らしの魅力を理解してくれるリピーターが増えてきています。」青山氏は続ける。「世界遺産は上五島に来るきっかけ。そして本当の島の暮らしと出会っていただき、また来訪したいと、いかに思っていただけるか。そこにガイドの会では力点を置いて活動しています」。
そして、私たちをいつも美味しい料理を提供してくれる前田旅館の女将は別れ際に語る。「やはり歳を重ねるとできることも限られてくる。島もさびれてはきている。でも、今できることおもてなしを提供できれば、きっとまた、帰ってきてくれるはず」。
自分とのご縁を大切にしてくれるから、そのご縁のある島にまた訪れたいと思う。港で見送るみなさんへ再来島を誓いながら、上五島の旅の幕を降ろした。
世界文化遺産の関連遺産「頭ヶ島集落」の教会でみなさんと記念撮影
クルーズを楽しむ悪いオジさんたち(笑)
神秘が訪れる瞬間。しっかりマリア様に見えた自分にホッとするハリノメンド
厳粛な空気の漂うキリシタン洞窟
海の民をやさしく見守る桐教会
帰りも見送ってくれるふるさとガイド協会のみなさん
2024.6.22
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