
一般社団法人 かなぎ元気村 メールマガジン4月号
梅は咲いたか桜はまだか 津軽平野に撥音高く 春の訪れ唄コで告げる (津軽じょんから節・二代目白川軍八郎 )
ただ今津軽は花盛り、梅も桜も満開になりました。桜は予想通り4月20日前後から咲き始め、どこからともなく人の波が金木まで打ち寄せてきました。各地の桜まつりも開幕し、芦野公園に近い我が家にも津軽鉄道の汽笛と津軽民謡ショーの歌声が届きます。
冬は雪に埋もれて過ごす北国の私たちは感覚的に年の始めが4月のような気がして、桜の花を見てここから一年が始まるという感覚ですね。
地球温暖化の影響で桜の開花は2週間ほども早まりました。必然的に農作業のペースも早まっているようで既に田打ちが真っ盛りです。この先の夏はどうなるのか気掛かりですが、一先ずはこの短い春を楽しみましょう。
一般社団法人かなぎ元気村では、みなさんのそばにいつも『かなぎ元気村』ということでメルマガを配信しています。今月も奥津軽の小タヌキのコラムやクマのぼやきをお楽しみください。
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【目次】
1.エネルギーの地産地消と生活のスタイル
2.シリーズ「記憶の断片」その13
3.ウェルネスコラム第30回
「島の住民・ニホンシカが闊歩する集落跡」
4.あとがき
1.エネルギーの地産地消と生活のスタイル
4月10日は下北半島佐井村の福浦地区で年一回公演の「福浦歌舞伎」が上演されました。この漁村歌舞伎は私にとって待ちこがれている年一回の特別な日であり、今回は若手の津軽民謡チームを編成して幕間のアトラクションに参加しました。佐井村は下北半島の左隅に位置し、どこから見ても距離的なハンディキャップが大きいのですが、この村は歴史が古く、点在する集落には独特の北前文化が色濃く残っていて、知れば知るほど新鮮な魅力に取りつかれてしまいます。
さて、歌舞伎の話は元気村のSNSをご覧いただくとして、今回驚いたのは村内に残る築150年の屋号「カネシチ」という古民家を村民有志がリノベーションして、オープンカフェやコワーキングスペース(スペースを共有する仕事場)、移住体験のための宿泊などに活用していたことです。そして、さらに驚くことに古民家の屋根はソーラーパネルになっていて、発電した電力を大きなサイコロ型の蓄電池に蓄えて一軒分の電力を賄っていました。照明は全てLEDで、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など一通りの家電品も揃っています。
さらにもっと驚くことに、この蓄電池は佐井村の「コメイチ」という地域商社が光を世界に届けるというプロジェクトで開発した「SAI-KORO」という商品なのです。そもそもアフリカへ電力を届けようというグローバルな目線で開発したものだそうで、屋外にむき出しで設置しても塩害・雪・高温などに十分耐えられるという見た目にも頑丈そうな代物でした。これなら再生可能エネルギーを地産地消できます。
近年目に余る大規模な風力発電や太陽光発電が自然環境を破壊しうることは誰しもわかることであり、自然環境をないがしろにする電力事業者の思惑を削って行かなければ近い将来大変なことになります。今回こうした事例を目にして、電力事業の交付金や固定資産税をあてにする自治体も地域のアイデンティティというものを真剣に考えるべきと思いました。
話の続きになりますが、古民家「カネシチ」のこうしたハイテクさは説明を受けなければ全くわかりませんでした。見た目からして外部は朽ちたような板張りだし、屋根のソーラーパネルも正面からは見えません。内部は梁も天井も構造材むき出しで、ヒバの柾葺きもそのままで、柾葺きを知る私としてはすっかり見とれていました。こうしたリノベーションは函館の設計者によるものだと知り、なるほどそうした函館の街のセンスに納得しました。 ※漁村の世帯はすべて屋号です。
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2.シリーズ「記憶の断片」その13
故郷金木町の芦野公園の桜について、とても大切な記憶をお伝えします。そもそも江戸時代の元禄年間に津軽藩が新田開発のために築堤した溜池の周辺が今の芦野公園なのですが、桜に関しては明治の後半に在郷軍人会や金木村商業会を設立した太宰治の父津島源右衛門らによってソメイヨシノを植樹したのが始まりで、その後大正15年に太宰の長兄津島文治をリーダーとして保勝会(景勝地を保全する会)が設立され、正式に芦野公園として今に至ります。戦前戦後にわたり桜の植樹は続けられていましたが、実は今から17年前までは桜のトンネルの踏切を越えた先の一帯は鬱蒼としたスギやドイツトウヒの林で、昼なお暗く薄気味悪いほどで、芦野公園の暗部ともいえるエリアでした。
市町村合併から3年後になる2008年の桜まつり直後、故今誠康金木商工会長が芦野公園再開発の指揮を執り、五所川原市、北五建設業協会、金木商工会、東京ふるさと金木会らによってこのエリアの再開発が夢のようなハイスピードで実現しました。あの時の関係者の情熱と技術の結集は金木にとってまさしく「プロジェクトX」だったのです。 当時プロジェクトの事務局として予算や関係先との連携を担当し、工事の一部始終を見ていた私にとっても生涯忘れられない思い出です。
再開発の技術的な手順は、暗い林を皆伐する→伐木は全て丸太にする→伐木の根を重機で掘り起こす→根と枝葉を全て最新の大型移動式チッパーで細断する→重機でその場の土砂と細断チップを混ぜながら整地する→新たに桜とモミジを植樹する→丸太を製材して公園内の古い建物の外壁や構造材にする→プロジェクト完結
どうです?根も枝葉も全て現場の土に還し廃棄物ゼロ。木材は公園内の整備に使用する完璧な循環型工事が実現したのです。新たに植えた桜とモミジは幼木ではなく樹高3m超なので生存率は100%。しかもチップが土に還ることで養分となり驚くほどハイスピードの成長を遂げました。いま桜のトンネルの撮影ポイントになっている踏切を越えたエリアと湖上ステージがあるエリアがかつてのプロジェクトXの現場です。陽当たりがよくソメイヨシノや紅八重枝垂桜が元気いっぱいに咲き誇っていますので、この話を思い出して散策してみてください。あの場所にはたくさんの人々の情熱と善意が埋まっています。
3. ウェルネスコラム第30回
「島の住民・ニホンシカが闊歩する集落跡」
(一社)かなぎ元気村の理事木谷敏雄(通称奥津軽の小タヌキ)が「日本各地のウェルネス地域の探訪」を綴ります。この小タヌキは、日本各地のウェルネスツーリズムや最近でいうWell-Beingツーリズムによる観光地域づくりの感動請負人(コーディネーター)として各地を飛び回っていて、そこそこ活躍しているらしい(笑)そんな小タヌキのウェルネス地域探訪にお付き合いください。
※ウェルネスコラムはこちら
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4.あとがき
昨年秋から米不足と米価の高騰が続いていますが、そもそも日本の農政がおかしいと誰もが気がついたはずです。米は古来より日本人の主食で国民の命をつなぐ食料の筆頭であるはずで、国内で自給できる体制こそが国家安定の基本なのですが、それが私たちの知らない闇の社会で投機や先物の対象になっているようです。輸入に依存する品とは違い、本来自給できるはずのものを自給させず価格を釣り上げて国民生活を圧迫するのはどう見てもまともではありません。国民生活を守るという正義のために国家権力を振るうことは当然あるべきではないかと思うわけです。物価高騰と収入のアンバランスも同じことで、末端の庶民生活を知らない人は政治家になるべきではありません。
世相風刺を歌にするというのは昔からあって、庶民感情と一致するがゆえにウケるのですが、津軽民謡にも今の世相に通じる歌詞がいっぱいありますので、最後にその一端をご紹介しましょう。
先ずは、津軽じょんから節 金山昌行作詞 「口先ばかり」
犬にも猫にも税金掛けて よその鼻息うかがうばかり 独立日本は口先ばかり
理屈並べて赤旗ふらせ わいろ貰うて懐ふやし 自由民主は口先ばかり
ろくにご飯も炊けないくせに 若いつばめと赤い酒のんで 男女同権口先ばかり
とうです? これはほんの一部です。津軽民謡は自由闊達、小宇宙的で面白いでしょう。
吉幾三あたりはそうしたDNAが濃いようですね。まだまだありますが、先ずはここらで止めおきまする(笑)
皆様、風薫る5月も息災でお過ごし下さい。
2025.4.29