
しま気質に触れる、とっておきの小値賀島時間
前回のコラムでも紹介した小値賀町教育委員会学芸員の平田賢明さんは語る。
「小値賀島は他者に対して『開放的柔軟的社会』なんです。五島列島や天草はアジアとの交易の要衝の地だから、人々が素朴、明るい、人懐っこい気質が育まれてきたのだと思います」。
だからこそ、2007、2008年『米国のピープル・トゥ・ピーブル国際学生大使』から世界一の評価を受けるという結果につながったのかもしれない。
「豊かな土地からもたらされる恵みは海の向こうから他者を呼び寄せ、招かれた人たちは、
土地に根付き、一部は農業に従事する、そして土地を守り、ムラが維持されてきたのです」(前出平田氏)。
しかし、時代の流れに贖うことはできず、2005年7軒ではじまった島泊は、最大で30軒まで拡がっていったが、今では、18件まで減少している。20年経過し、やはり撤退する家が増えてきたのだ。
島泊のリデザインのアドバイザーとして会議に参加する。島のおかあさんたちが集まってくる。ほがらかで前向きな会議。これだから、島旅で訪れる人が笑顔で帰っていけるのだと思う。島泊を受け入れる家庭が少なくなってきている危機感から、料理教室もやって、つながりを拡げていく取り組みについて意見交換が進む。
「島旅には、リピーター増えてきています。20年たって、原点回帰で帰ってきてくれる人たちがいて、お世話になったじいちゃん、ばあちゃんのお墓まいりに来る人もいるのですよ」とおぢかアイランドツーリズム事務局長木寺智美さんは語る。これも小値賀島気質がこういった事象を引き起こしてきているのだ。「これからは、訪れた人たちと、もっとつながる島をめざしていきたいですね」(木寺さん)。
そして、小値賀島は外国人も呼び寄せている。その中心となるのが、リトアニア出身の島旅コンシェルジュとして活躍するシンコビッチ・ヴィクトリアさん。彼女の案内で島の街中を散策する。最盛期には1万人を超える人が住み、捕鯨の街として発展し、その中で育まれてきた島の暮らし文化が紐解かれていく。
何しろ、ヴィクトリアさんは島の人たちと仲がよい。生節をつくる職人さん、市場で働く人や宿のおかみさんたち、そして地元のスーパーのおばさんと話がはずんでいる。そして、昔懐かしい活版印刷。文字をみているだけで昭和が蘇ってくる。印刷の音がまた、ここちよいリズムだ。
こんな島の暮らしを垣間見ながら、てくてく、てくてくと、あっという間の1時間半。
この時間は本当に贅沢。出会う人、出会う人から醸し出される小値賀島気質。ヴィクトリアさんもすっかり身にまとっている。
ヴィクトリアさんが、地元の人たちとの「ここちのよい暮らし」をしていることが伝わってくる。ヴィクトリアさんと一緒だからこそ、地元の人の顔を見ながら話ができるという一番贅沢な島旅を楽しむことができた。これが、インバウンドの新しい人たちをも呼び込み、小値賀島気質でつながっていくのであろう。さあて、今年度はいつお邪魔できるかな。
島々からなる小値賀町を望む
島の特産品「生節」の職人さんと笑顔で語り合う
活版印刷の活字が所狭しと並ぶ
島を守る地蔵様が至る所に鎮座する
活気に満ちた市場でもヴィクトリアさんは人気者
人気のご当地グルメ「島づけ丼」をいただきました!
2025.5.26
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