
タイムトラベラー! 「ファットバイク」で氷河期・旧石器時代へ遡る
観光地域づくりの仕事に携わって早30年…
この仕事をしていると、各地を巡り縄文から飛鳥・平安の中世、さらに近代から現在まで時代を駆け巡っていると実感する。
今回は、さらに時代を遡り、なんと約2万8千年前の地層から発見された「埋没林」との出会いによって、その時代の浪漫に触れることのできるグラベルライドツアーについて紹介する。
グラベルライドという言葉をご存じであろうか?
今、サイクリストにとって、ロード、オフロードの中間、林道など少し険しい道を楽しみながら走るというものだ。
私たち、かなぎ元気村で約15年取り組んできた奥津軽トレイル。しかし、トレイルコースも昨今の気候変動の流れで、土砂崩れなどにより走れないコースも。そこで、この津軽森林鉄道軌道跡でもある林道コースを活用し、縄文をテーマに行ってきたサイクリングコースとも組み合わせ、さらに新しい資源も掘り起こし、グラベルライドの世界観を楽しんでもらおうというものである。
冬のアクティビティで活躍するファットバイクという武器が元気村にはある。もともとは砂浜を走るものとして開発され、注目されたタイヤの太いバイクだ。
そのファットバイクで、青森県の西海岸にある、美しい夕陽海岸としても知られる海岸線をファットバイクで走る。それが、観光コンテンツのハイライド!
その海岸線を走る目的が、約2万8千年前の時代へ遡らせてくれる地域資源が「埋没林」と出会うこと。ファットバイクは、まさにタイムマシンとなる。
「埋没林」のあるこのエリアは、湿原が拡がる一帯で津軽国定公園となっている。代表する湿原は、ベンセ湿原。学術上貴重な海岸低層湿原で苔状が幾層も重なってできた湿原で、5月下旬にはニッコウキスゲで一面が黄色に染まり、6月上旬には、ノハナショウブで黄色から紫へ。さまざまな草花が咲き誇る。
このエリアの湿原の自然を支えるのは豊富な水。水分により、真空パックされたため「埋没林」は腐らずに残り、そして、地中に埋まっていたものが、海岸線の断裂の中で、出現したといわれている。
ちなみに、このエリアには縄文前期から後期の遺跡では有名が「遮光器土偶」が出土した亀ヶ岡石器・縄文遺跡がある。土偶や土器が今の時代に出土したのは、沸き出る豊かな水によって真空パックされてきたからだという。
さて、今回のグラベルライドの奥津軽のコースはこうだ!
築150年の古民家かなぎ元気村からはじまり、樹齢800年を超えるといわれる青森ひばの神木に出会い、近代遺産である津軽森林鉄道の遺構に出会い、その当時に思いを馳せる。
そして、鎌倉時代から室町時代に創建されたといわれる奥津軽を代表する神社、高山稲荷神社に向かう、今やSNSで人気の映えスポットのある千本鳥居を散策する。
そして、ベンセ湿原に立ち寄り、埋没林へ向かう。気分はタイムトラベラーだ!
最後に西海岸に沈む夕日に出会う。何も考えずに、遡ってきた時代が走馬灯のように流れていく。
私の夢がある、たどり着いた西海岸で、最後にこの湿原地帯のピートを使ったベンセウイスキーで夕陽を見ながら乾杯すること…そんなタイムトラベルは、ほんと至福な時間となるはず。結局お酒は旅には欠かせない(笑)…
奥津軽の青森ひば森の中へ。神木十二本ヤスに出会う
青森ひばの森で郷土料理弁当とハンモック体験で癒しの時間
奥津軽の由緒ある高山稲荷神社の物語に共感する
潮風を浴びながら西海岸を疾走する
埋没林に出会い、2万8千年前にタイムスリップ
西海岸へ沈む夕陽を見ながら、遡った時間を振り返る
2025.7.28