
社会的にも満たされた状態を創出するボランティアツアーでWell-beingに!
先日、かなぎ元気村で取り組んでいる観光庁の事業で久々阪急交通社「たびコト塾」で縄文ウェルネスの考え方で『歩く』についてお話する機会をいただいた。
その冒頭でお話させていただいたのが、WHO憲章に記載されている「健康」の定義。
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」としている。ココロとカラダはもとより、地域の活動などにも積極的に参加して、社会的にも満たされている状態を創出していくこともウェルネスにとっては重要なのだ。
そして、社会的に満たされた状態になる旅ということで注目を浴びているは、このコラムでも紹介したボランティアツアーである。小タヌキも参加した令和元年に起きた台風15号、19号により甚大な被害を蒙った南房総市の被災地のボランティアツアー。そして、かなぎ元気村で企画した津軽地方を襲った豪雨による土砂崩れにより崩落した道や橋を復旧させる奥津軽トレイル「みちのく松陰道」の道普請ツアーの2つを紹介させていただいた。
今や、気候変動により、昔は見られなかった線状降雨帯が頻繁に各地に豪雨被害が拡大させ、地方では、超高齢化も相まってボランティアの方々の協力なしでは、地方再生は進まないともいえるような現実が各地で起きている。その解決の糸口の一つがボランティアツアーといってもよいであろう。
災害のボランティアツアーは、ビジネスにというわけにはいかないが、かなぎ元気村の事業でお世話になっている阪急交通社とは、農業支援ツアーを具現化したことがある。農業の現場には、超高齢化の波が押し寄せ、労働力は激減している。この現場を支援するしくみができていかないと、日本の農業は衰退の一途に…
出来上がったツアーは、鶴岡市(山形県)と㈱阪急交通社が企画した『庄内柿農業支援ツアー6日間』。舞台となった鶴岡市は数百年にわたり「種」を守り継いできた「在来作物」が50種類以上あることを背景として、2014年に「ユネスコ食文化創造都市」に認定され「食の理想郷」へと歩みを進めている。
その一環で、鶴岡市と㈱阪急交通社は、地域の食文化や農業をベースにした旅行商品開発による地域活性化を目指す「農業観光連携事業に関する協定」を締結。小タヌキは、旅行開発のために庄内の農家さんらとの開催したワークショップのファシリテーターという大役を務めたのである。
この農業支援ツアー初チャレンジのテーマになったのは、在来作物のひとつ「庄内柿」。庄内地方一円で栽培されている平核無(ひらたねなし)という渋柿で明治時代から大切に受け継がれてきた。種がなく上品な甘さが際立つブランド柿であるが、実は、最近では、人手不足で収穫できず、庄内柿が園地に取り残され、朽ちていく状況になっていた。
「あら、帽子に赤とんぼがとまって、ブローチみたい!」とツアー客。ほのぼのとした時間が庄内柿農園に流れる。農作業の合間のティータイム。おやつはもちろん、採れたての庄内柿と生産農家と談笑しながら過ごす。和やかなティータイム終わって、作業に戻る。次第に手際もよくなる参加者は、3日目になると、手に持っただけで、Lサイズ、Mサイズと選果できるように。受入農家は「収穫が進みました。本当に戦力になってくれています」。
参加者たちは農業を楽しみながら、非日常空間を体験し、かつ、地域貢献できるという実感を味わうことができるというプログラムが実現したのである。ちなみに、このツアーはあっという間に定員になったという。
このようなボランティアツアーを具現化していくためには、コーディネイト組織が重要になってくる。今回、その役割を果たした阪急交通社は何百万人という顧客、ファンを持っている。そのニーズを捉えているからこそ、マネジメントし、実現することができた。
こういったノウハウを持ち、都市と農村の関りをしっかりと理解した、社会問題に向き合うDMCやDMOがこれから先、とっても重要になってくるのだ。
プログラムの最終日に、お歳暮には早いが知人・友人の住所を次々に宅配伝票に記載する参加者に出会った。真摯に農作業に向き合いながら、お客様にもなってくれているのだ。そして、その地が災害に巻き込まれたら、真っ先に飛んできてくれるであろう。まさに、『関係人口』に。
農繁期に時給を高くしても集まらない働き手という切実な問題を解決しながら、農業の担い手や移住といった農村振興の種がこのツアーで育まれているのを実感した。そんなツアーがこれから拡がっていくとWell-Beingの輪は広がり、社会的にも充実した質の高い生活を送ることができると思うのだが…
阪急交通社たびコト塾で講師をする小タヌキ
かなぎ元気村で実施した道普請ツアー
庄内柿の収穫
庄内柿農業支援ツアーチラシ
生産者との団らんでつながりが生まれる
選果にも慣れ、出荷も支援できるように
2025.9.30
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