どさんこ「キナコ」の瞳に吸い込まれ、訪れるここちよい時間へ

前回のコラムでは、道南にある道の駅なないろ・ななえの訪問から、自分のルーツやDNAのつながりを意識にして「生きる」ということが、とってもここちよいことだということを書かせてもらったが、今回は、七飯町の大沼国定公園にある『パド・ミュゼ(Paard Musee)』、直訳すると「在来馬の博物館」について紹介したいと思う。

 

そこでは、北海道の在来種「どさんこ」でつなぐ「牧場・森・農園の暮らし」の中でのホームセラピーを経験できる。前回紹介した北海道開拓のDNAを受け継ぐ宮本英樹氏が代表を務め、「北海道の開拓を支えた『どさんこ』という在来馬を守りながら、馬と人と自然が協働・共存する21世紀の開拓のあり方を開拓の原点に戻り、この地で実践する」をコンセプトに事業を運営している。

 

2019年前、コロナ渦前までは、コンスタントに訪れていたが、しばし足が遠のいていた。久々の「どさんこ」との出会いに胸を膨らませる。初日、体験の予定だったが、土砂降りに見舞われ、翌日に『ネイチャーホースライディング』にチャレンジすることに。その日は、鹿追町の温泉にのんびり浸かり、夜は牧場スタッフと、サフォークのジンギスカンに舌鼓。21世紀の開拓の牧場の暮らしの中へ、スタッフとの会話も盛り上がる。このサフォークも今、この大沼流山牧場で生産を行っている。ここちよく飲んだ後は、深い眠りに…

 

ここちよい朝が訪れる。クラブハウスのドミトリーから見える牧場の風景が美しい。
どさんこの直食作業をお手伝いし、スタッフと朝餉をいただく。
そして、いよいよネイチャーホースライディングにチャレンジ!
オリエンテーションを受け、早速、パートナーとなる「どさんこ」のいる牧場へ。まずは、裸馬を捕まえるホースキャッチから。インストラクターから今日のパートナー「キナコ」を紹介される。

 

「馬は言葉を理解できないため、まず馬の警戒を解き、馬に触れ合っていただきます」。
あらゃ、そっぽを向かれる。ハードルは高い。なんとかキャッチしたら、引き馬をしながら厩舎へ移動。少しずつキナコとの距離を縮めるために、まずは手入れ、ブラッシング。気づくとキナコに向けて独り言を投げかけている、そして、すっかりその瞳に吸い込まれていく。

 

そして、馬具を着けて、いよいよ牧場でキナコに乗る。丸馬場をぐるぐると回る。右回り、左回り、そしてセンターを突き抜ける。きりっと背筋を伸ばし、ゆったりとした歩調で牧場を廻ると自分とキナコが一体化していくのがわかる。そうなったら、いよいよ牧場内散策へ出発。
眼前に広がる広大な緑の牧場景観と点在するどさんこたち。そしてその奥にどっしりとそびえる駒ヶ岳(標高1,131m)。青空に映え、すうっと牧場全体に清涼感が流れる。

 

乗馬での歩行というと「馬が動いてくれる」という印象があるかもしれないが、実はなかなかの全身運動だ。体のバランスを保つために体幹をフル稼働させ、馬の動きに合わせて、上下に絶えず小さな筋肉運動を行っている。これは速歩きと同等の運動強度があるのだ。
馬に乗ったときの三次元的な揺れは人間が歩くときの骨盤の動きに近く、体幹を刺激し、バランス感覚や筋力を自然と鍛えてくれるという。

 

そして、ホースセラピーとは、馬と人とのふれあいを通じて、心身のバランスを整える療法。馬の体温はおよそ38度前後。人肌よりも少し温かく、その温もりに触れるだけで心がほぐれていく。また、馬は人の感情や緊張をそのまま映し出す「鏡」とも言われ、馬と向き合うことは、実は自分自身と向き合うことにつながるのだという。こうした相互作用が自己理解や感情のコントロール、コミュニケーション力の向上に効果があるとされ、欧米を中心に医療・教育・福祉の現場でも広く活用されている。そんな効果をここパト・ミュゼでは体感できる。

 

駒ヶ岳を望む清々しい大沼の自然の中で、馬の鼓動を感じながら過ごす時間は、日常のストレスをやさしく溶かしてくれる。

 

また、キナコに会いたいと思う。北海道の開拓者たちが切り拓いた大地で、新たな開拓の形を体現しているどさんこミュゼ。そこで育まれているキナコの瞳には、そんな悠久の時間が宿っているような気がした。
別れ際はこの一言!「キナコの瞳に乾杯!」

 


パド・ミュゼで牧場スタッフとジンギスカン、牧場の暮らしぶりに触れる

 
 


朝から一仕事。馬に近づくひととき

 


どさんこ「キナコ」にブラッシング。丁寧に丁寧に

 


キナコとともに牧場を散策。雄大な風景に心が解放される

 


スタッフと駒ケ岳を背景に記念撮影

 
 

2026.7.30

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