帰らぬ思い出
また一人太宰治の生き証人が旅立たれた。
林聖子さん。
太宰の短編小説「メリイクリスマス」に登場する少女はこの人だ。
2008年のクリスマス直前の夜、私たちは新宿のバー「風紋」のドアを開けた。
ここは名だたる文士や編集者などが集う、いわゆる文壇バーとしてその名を知られた店だ。
私たちが金木で太宰にかかわる仕事をしていると知り、とても喜んで、たくさんの思い出を語ってくださった。
驚いたことに、お店の常連客らと津軽には何度も来てくれていたのだそうだ。
斜陽館も写っているアルバムを開いてとても楽しそうだった。
文壇バーと聞いて正直腰が引けていたが、気さくなマスターとママだけで切り盛りしている超がつくほど庶民的なお店だった。
あのお人柄なら文士ならずとも一目でファンになるはずだ。
残念ながらお店はもうない。
きっとあの世で太宰治と再会を喜び合っているだろう。
心からご冥福をお祈りします。
2022.3.2
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