哀悼 阿部和唐さん
阿部合成のトリック
太宰治の親友阿部合成(洋画家)の長男で著名な陶芸家である阿部和唐さんが亡くなられた。
和唐さんの母が創業した東京上野の名店、みちのく料理「北畔」の暖簾は何回かくぐった。
さすがの美味に酔い、お店のそこかしこにある和唐さんの作品に魅せられた。
2018年4月の弘南鉄道ハイボール列車に参加した時に初めてご本人にお会いし、当時自分が太宰に関する仕事をしていたことで、生前の太宰治の記憶や父の思い出をとつとつと語って下さった。
芦野公園の太宰治文学碑は金色に光輝く不死鳥が目を引くが、あの輝きは父阿部合成が制作時に意図したトリックで、「太宰は恥ずかしがりだから、派手な仕立ては絶対に嫌うはずだ。
だが太宰治の文学は時を経てこそ光輝く」と。
初めは目立たない色にして、上面の塗装が経年の風雨で剥がれ落ち、やがて金色の地金が現れるのを意図していたのだと…
和唐さんは父から聞いた言葉を穏やかに話して下さった。
感動で涙があふれた。
あの夜のことは忘れない。
2023.1.19
その他の記事
- 2022.06.19
- 2021.09.07
- 2021.02.12
- 2024.04.21
- 2023.09.07